定点観測:コラム|COLUMN

コミュニティーの再起動



このところ、Rコモンズのメディア露出がすごい。
新聞や雑誌で、大きな紙面で紹介していただいている。

・2010.11.29. 山形新聞夕刊 『山形発“芸術版”の「トキワ荘」』
・2010.12.04. 山形新聞夕刊 『アート住む 共同生活 山形 芸工大生のシェアアパート訪問』
・朝日新聞大館支局、同社山形支局、読売新聞山形支局(←年明けに3紙に順次掲載)
・月刊『ブレーン』2010年2月号 連載コーナー「地域のクリエイティブ」

「山形発”芸術版”のトキワ荘」(山形新聞)の記事が呼び水になったと僕なりに分析。
不景気が続く師走の地方都市で、彼らのシェア・スタイルは、
相互扶助の精神が生きていた時代への、ある種のノスタルジーとつながっているのか。

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Rコモンズの活動は、予想外のリンクをみせることがある。

2009年に山形国際ドキュメンタリー映画祭と共同設立した仮設ドミトリー『アジアハウス』で、
僕はYIDFF東京事務所コーディネーターの藤岡朝子さんと、
連続レクチャー『再生のスタンス』を地下のスタジオで企画した。



http://www.tuad.ac.jp/museum/archive/0910_misawaAsia/index.html

スーザン・モーグル氏、北川フラム氏、アマン・カンワル氏、
赤坂憲雄氏、キドラット・タヒミック氏など、
日替わりでゲストを迎え〈再生〉をテーマに、濃密なディスカッションを繰り広げた。

アメリカにおけるフェミズム闘争史、ミャンマーの民主化闘争、
ポストコロニアルのアイデンティティーの揺らぎ、周縁化され続けた山村集落の現実…
素晴らしい学びの夜だった。



反面、僕自身にしみ込んでいる、いわいるコンテンポラリーなアートやデザインで飛び交う言語体系が、

この時ほど、堪え難いほどに軽薄に、感じられたことはなかった。
(裏を返せば、この国のアートやデザインはマーケットに構造的に支配されすぎているということだ)

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この6夜連続のトークに毎回参加し、熱心にメモをとっている男性がいた。
最後の夜に声をかけると、彼は労働者の権利を保護する団体(=れんごうユニオン)の職員で、
ミサワクラスの〈共同生活・活動スタイル〉に関心を持っていたという。
また、幾人かの海外の映画監督から、フランスの『スクワット』(不法占拠運動)や、
60~70年代の全共闘時代の、アングラカルチャーとの類異性を指摘されたりもした。

「えっ? ここ(アジアハウス)ってスクワットじゃないの?大学の企画だって?」
「なんだ、リアルにスクワットだったらすごく面白かったのに。僕が映画化したよ!」
「このホコリっぽい感じ。懐かしいね。70年代のロスを思い出すよ。」



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閉塞感のある社会、空洞化する街と、
その〈現実〉に対して受動的であるだけでなく、
なんとかしようともがく若者たち。

彼らの将来は、地域社会の未来と同様に先行き不透明だが、
かといって、手をこまねいて衰退を待つわけにはいかない。
また、ホームタウンを離れてフリーターとして都会に出ることは、
20代前半までに構築したセーフティーネットをひとつ、自ら切り離してしまうことになる。
そのリスクを冒してまで働きに出る〈都市〉は、
これまでと同じような豊かさを享受してくれるのだろうか?

アジアハウス地下でおこなわれた、越後妻有アートトリエンナーレのディレクター
北川フラムさんのレクチャー、『インターローカルな芸術祭が社会に与えるインパクトについて』は、
「アートによる地域再生は、最後に残された闘争の〈現場〉である」という、
一種のアジテーションのようにも聞こえた。
(WEB記録=http://www.tuad.ac.jp/museum/archive/0910_misawaAsia/page3.html

もちろんRコモンズに政治的なポリシーがあるわけではないし、
かつての〈闘争の時代〉とは異なり、コミュニティーは小さいけれども、
地方の現実は、彼らに「生活し続けること=表現し続けること」の切実な動機を与えている。

山形市におけるミサワクラスからRコモンズまでの展開は、
100%自覚的ではないにせよ、そういう文脈で読み解いていくと、
新聞でいえば、文化欄よりも社会欄のほうがしっくりくる。
だからこそ地方支局で奮闘する、若い新聞記者たちの共感を得たのだろう。

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それだけに、プロジェクトが担ってしまった責任は大きい。
と同時に、〈この街の現実〉を〈自分の現実〉として共有できない者は、
Rコモンズを早晩、卒業していくしかない。

ここまで地域に浸透したプロジェクトは、立ち上げよりも継続の方が難しい。
継続のためのエネルギーにこそ、各人の〈動機〉が表面化する。
ミサワクラスからはじまったプロジェクトも3年目。
立ち上げ期を支えた建築系院生たちは、この春で全員、就職でミサワクラスを巣立っていく。

2011年の春からスタートする第3期に、
このプロジェクトの真価が問われていくのだと思う。

宮本武典

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定点観測について

中心市街地にあらわれた「Rコモ
ンズ」を1人遠くから静かに見つめる人物がいる。Rコモンズという共同体がくりひろげる変化や成り行きを、夜空の星をながめるように見つめ、記録していきます。

宮本武典|観測者|東北芸術工科大学美術館大学センター・主任学芸員

キュレーター/東北芸術工科大学美術館大学センター講師・主任学芸員。いくつもの地域密着+復興アートプロジェクトを同時進行中。ミサワクラスとRコモンズの立ち上げ仕掛人。山形市在住&子育て中!