失敗、あるいは感覚

こんばんは、相変わらずホームベーカリーに夢中なワンダです。

とはいえ、ミサワクラスに入居してから、キッチンの片隅でホコリをかぶっている物体が、あの愛しのホームベーカリーだと気づくのに1週間ほどかかりました。

かつて、子どもの頃、新たに売り出された文明の利器が我が家にやって来て、母親が嬉々としてパンを焼いていたことなんて実はすっかり忘れていたのですが、パッと思い出しました。

ひとまず、それをキレイに掃除してみました。異状は無さそうでした。
それから、聞き込み調査をしてみました。
何でも知ってそうな、ミサワクラス創設当初からの住人であるO氏に訊ねてみたところ、それはさる奇特なお方から譲り受けたものだそうで、充分使えるコンディションであるが、いまだかつてここでは誰も使ったことがない、という事実が判明しました。

そうして、意を決して、材料を揃え、実際にそのホームベーカリーを使ってパンを焼いてみたのは、さらに1週間後のことでした。
すると、あっけないくらい簡単に、美味しい食パンができました。


案ずるより産むが易しだなと得心して、普通の食パンのみならず甘めのタイプや全粒粉を混ぜたりクルミを入れたり、いろんなバリエーションを開拓してみました。
そうすると、そっけないくらい上手に、それぞれ美味しくできました。

しかし、10回ほどの成功に気をよくしていたある晩、クルミ入り食パンの焼きあがりを知らせるブザーを聞いて、いそいそとホームベーカリーのフタを開けた時、大変なショックを受けました。

何というか、膨らみが通常の半分くらいで……、一言で言うと、失敗したのでした。
焼きが不十分だったのかと思いきや、中身は生焼けでもなく、一応ちゃんと焼けていました。
でも、塩辛かったので、たぶん塩を多く入れすぎてイーストの発酵がうまくいかなかったのだろうと反省しました。

とても落ち込みましたが、気を取り直して、思いつきでそのパンをフレンチトーストにしてみたら、塩気がきいてとても美味しかったので、なんとか明日からも生きていけそうな、そんな気がしてきました。

そして、残りは“塩クルミパン”と称して、共同居住者の皆さんに食べてもらいました。

(実は失敗パンだということは内緒にしていました。ごめんなさい)

それにしても、何でまた、そんな初歩的なミスをしたのか納得がいかなかったのですが、その数日後にまたパンを作ろうとした時にやっと謎が解けました。
電子計量器の電池が切れかけで、的外れな数字を示していたのです。

確かに、あの時、容器に材料を入れながら、なんとなく見た目のボリュームがいつもと違うなと、かすかな違和感がよぎったのでした。
機械に頼らず、自分の感覚で判断できるようにならないとな……まだまだ修行が足りないと思いました。

そう言えば、非常にシステマティックな料理法を実践しているK氏が、ある時キッチンで話してくれたことをふいに思い出しました。

「お店とかで食べても味噌汁は毎日だと飽きるけれど、なんで家庭のお母さんの味噌汁は毎日でも飽きなくて美味しいのか知ってる?」とK氏はふと言いました。
「うーん……そんなこと考えたことなかった」というのが女性陣の反応でした。

「お店とかの味噌汁は一定のレシピで作ってて毎日同じ味だけど、お母さんの味噌汁は女性特有のバイオリズムによって、実は日々ちょっと濃くなったり薄くなったり、味が変わってるんだって。だから、飽きないんだって」だそうです。

K氏は、4月初旬からずっと仕事のため福島の猪苗代に赴任していますが、“はじまりの美術館”という美術館を6/1にオープンするための準備をしているそうです。

バリバリ働いているんだろうな。元気でやっているかなぁ。

キッチン遍歴

はじめまして、ワンダです。今春の入居以来、ミサワクラスのキッチンに魅了され、放置されていたホームベーカリーを活用してパンを焼くことに飽き足らず、もはやイチゴが旬となればジャムを煮て居る今日このごろです。

さて、これまで引越を20回ほど経たうえ、なんとも不可思議なキッチンにたどりついたのでした。
とにかく自分史上いちばん広くて、感動しています。単身者の物件さがしにおいては妥協せざるをえないところ、まさに共有するからこそ、これだけのスペースを使うことができるというわけです。

実際、私の昨年度実績としましては、約1メートル幅にIHコンロ1つと小さな流しがあるだけのミニマムなワンルーム仕様に対して、目玉焼き以上の創作意欲を持ちえませんでした。
また、それ以前には、ほぼ通路と同等のスペースで成立している1K物件のケースも多々ありました。

とはいえ、キッチンというからには、物理的な広さ狭さの条件が機能性や自由度を大きく左右するという事実を重くみて、なるべく古めの木造アパートの1DK物件を渡り歩いてきたものでしたが、2口コンロのある4.5帖ほどの空間とはいっても、窓の有無や隣接する玄関・風呂・トイレ・居室との生活導線について等々、日常における微妙な問題も諸々となきにしもあらずでした。そういった一長一短を汲み取りながら、それなりにグラデーションのあるキッチン生活を送ってきました。



そう言えば、ここは窓に恵まれています。

日中は電灯いらずで、特に朝の爽やかな光が清々しく素敵です。

そして、それぞれ個性的な共同生活者の面々が十人十色に使っています。

キッチンという空間を共有することは新鮮な経験で、いろいろ気づくことが日々あります。

私を含め今春からの入居者も多く、まだ全員が一堂に会するという機会を持てていませんが、またいずれそういうことも踏まえながら、単数形でもあり複数形でもあるようなキッチン生活が展開されていくことでしょう。

まだまだよく分からないことも多いですが、なんだか面白そうです。

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「Rコモンズ」シェアアパートメントのミサワクラス、花小路トランクに住まう8人の女の子たちのリレーエッセイ。キッチンに共通した「ジャム」をきっかけに、キッチンで話す、食べる、つくる、それぞれのキッチンでまき起こる女の子たちのぺちゃくちゃな会話を素材に、ぐつぐつと新しいジャムを作ります。

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